エピローグ


 亜紀は、大きなボストンバックを引き、国際空港にいた。明美と敏江が見送りに来ている。
「ほんとうに、わたしたちをおいて行ってしまうのですか?」
 明美の頬を涙がつたう。
「お父様は妾の子を日本に置いておきたくないのでしょう。ヨーロッパで歴史を勉強して、いつか帰ってくるわ」
 と亜紀は少し寂しそうだ。
「それより、あなた高校中退して、どうするつもりなの?」
 と亜紀は敏江に聞いた。
「勉強は苦手だったし、授業についていけなくて・・・・女子プロレスラーを目指そうと思います」
 と敏江は胸を張った。
「あなたなら、ピッタリね。でも、痛がりを直さないといけないわよ眉ちゃんを見習ってね」と亜紀。
「それから、明美。あなたの撮ったビデオ、ハリウットでも好評だそうよ。スピッツバーク監督も絶賛していたわ。写真家の篠山鬼神先生も天才だってほめていたわ。いますぐにでもプロとして通用するって」
「最高のモデルでした。眉ちゃんにも感謝しないと」と明美。
「あなたたちのおかげで日本で最後の夏休みを楽しく過ごすことができて本当によかったわ。いつまでも忘れないわ」と亜紀が言った。

 章一は「末期患者におけるメンタルケアのあり方」という論文を発表したあと、医学会を退いた。その論文は、瀕死の患者と家族のかかわり方について述べられており、科学的ではないという批判もあったが、メンタルケアの発達に大きく寄与した。
 真野財閥の経営陣に加わった章一は、地下部門の育成に力を注いだ。
眉子の拷問ビデオは全120巻にまとめられ、世界中の金持ちや上流階級、権力者などに販売された。その値段は、100,000ドルとも1,000,000ドルとも言われ、真野財閥の地下部の取引のメイン商品となった。
 その後、何世紀にわたり、幾度の世界恐慌、政治動乱、大戦をくぐり抜け、真野財閥が成長し世界のトップ企業に発展していった背景には、地下部門の存在があったといわれている。

<完>


ご愛読ありがとうございました。


*この物語は、フィクションです。実在の人物、企業、団体、事件等とは、一切関係ありません。


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